全日学2連覇、WTT初優勝。進化し続ける出澤杏佳の独創的プレーを支える「緻密さ」

2025年01月06日

IDESAWA, Kyoka

出澤杏佳
2024年全日本学生チャンピオン
専修大4年

●●● 出澤杏佳●いでさわ・きょうか
2002年6月28日生まれ、茨城県出身。小学1年で卓球を始め、日立大沼卓球クラブで小貫美穂子から指導を受け、12年全日本カブ準優勝。四天王寺中に進むも、茨城の泉丘中に転校。大成女子高1年時に全日本ジュニア優勝。専修大に進学してチームの主力として活躍しながらTリーグにも出場。全日学では22年準優勝、23・24年2連覇。23年ワールドユニバーシティゲームズ銀メダル。右シェーク表ソフト・粒高攻守型 ●●●

 2024年10月の全日学(全日本大学総合卓球選手権・個人の部)で2連覇を達成。そして自身にとって初のWTT参戦となった11月のWTTフィーダー2連戦では、2大会目(ビラ・ノバ・デ・ガイア)でシングルス初優勝という快挙を達成した。

 フォア表ソフト、バック粒高一枚ラバーという、他に類を見ない用具で戦う出澤。「皆が使っていない用具の力で勝つというのは、上のレベルでは限度がある」と自身が語るように、国内トップや世界の舞台で戦うためには、独自の用具に頼るのではなく、極限まで使いこなす必要がある。

 23年全日学優勝後にもインタビューを行ったが(記事はこちら)、全日学2連覇を達成した今、改めて用具とプレースタイルについて聞いてみた。

●ー全日学では全体的に素晴らしいプレーでしたが、特にフォアの攻撃の安定感が印象的でした。

 私が小学生時代に卓球を習った小貫美穂子さんのつてで、森澤幸子さん(専修大OG/1967年世界チャンピオン)に教えてもらうようにりました。それまで感覚的にプレーしていたんですが、足の動かし方や体重移動などの基本を教えてもらいました。基本を学んだことが、プレーが安定してきた要因だと思います。

 これまでの私は「動けない選手」というイメージだったと思います。今回の試合もビデオで振り返ると、自分が思ってるほど動けていないんですが(笑)、良くなってきたとは思います。

●ーフォア面の表ソフトは回転系テンションで、変化よりは安定性や攻撃力重視のラバーですよね。

 はい。私は表ソフトと粒高のわりにはそこまですごく変化をつけるタイプではありません。表ソフトはそこまで変化は出ない『VO>102』だし、粒高『カールP5V』も変化系ではないです。

 守っての得点もあるけれど、できるだけ攻撃して得点することを考えるようになりました。小学生の頃はミスしなければ勝てると言われていたけど、上のレベルでは自分から先手を取って攻撃するよう心がけています。

 バックが粒高だから、フォアは裏ソフトに近いラバーのほうが、両面で球質に違いを出せます。『VO>102』は裏ソフト寄りのラバー。表ソフトにも様々なタイプがありますが、変化に頼るのではなく自分から攻撃していくには、表ソフトの中で一番良いラバーだと思います。

 カットと試合した時に特に感じるのですが、回転がかかるので、ミート打ちだけで決めるのではなく、ドライブと使い分けることがでる点が良いですね。

●ー全日学ではフォアのカウンターも冴えていましたね。

 『VO>102』は球離れもいいし、自分で練習してタイミングさえ取れれば、カウンターで良いボールが出ます。「タイミング」が一番重要なポイントだと思いますね。

●ーバックも変化重視の粒高ではないですよね。

 『カールP5V』は粒高っぽさは少なくて、弾いて打てる変化系表ソフトくらいのラバーです。たまにカットブロックで緩急をつけて、自分を助けてあげるくらい。ラバーに頼って相手のミスを待つなら、使わないほうが良いですね。ただ入れているだけでは、相手はやりやすいと思います。変化をつけていきたいなら『カールP1V』や『P4』などのほうが良いと思います。

●ー表ソフトも粒高も、打球面の調整がシビアですよね。

 シビアです。選手よって、ボールが直線的とか山なりとか、回転量やスピード、ボールの深さなどが一人ひとり違います。相手ごとに合わせて調整する必要があります。

 私はいろんな人と試合をしているので、試合前に相手の球質を頭に入れておいて、「この人はボールが浅いのでフォアは踏み込んで打ったほうが良い」とか、「カウンター気味に打つほうが良い」などと意識します。

 同じ相手でも、たとえばフォアクロスとバックストレートなど、コースごとに正確な打球面が出るよう調整しています。本当に緻密にやっていますが、このスタイルで大雑把にプレーすると本当にダメですね。1球1球、数㎝のズレでミスが出るので、精度を上げないとダメです。
(以上、2024年11月にインタビュー)

 わからないことがあると「コーチ陣に質問をしまくる」という出澤。緻密に、貪欲に、技術の精度を磨き続けた結果が、今の好成績につながっている。学生界のトップに立ち、Tリーグでも活躍を見せる出澤杏佳。唯一無二のプレースタイルが、今後、国内トップクラスや国際大会の舞台でさらに光り輝くか。注目していきたい。

<取材:卓球王国>

2024年全日本大学総合卓球選手権(全日学)で2連覇を達成した出澤

出澤選手の使用用具

フォア面 VO>102
表ソフト
5,500円(税込)
https://www.victas.com/ja_jp/products/rubber/pimplesout/spin/vo-102

バック面 カールP5V
一枚ラバー(OX)
3,960円(税込)
https://www.victas.com/ja_jp/products/rubber/longpimples/curl-p5v