VICTAS JOURNAL

全日本卓球速報 with 卓球王国

パラ選手の岩渕幸洋。見せ場作るも初出場の全日本選手権を2回戦で終える

男子シングルス2回戦、善戦するも敗れた岩渕

●男子シングルス2回戦
岩渕幸洋(協和キリン) 4-11、7-11、10-12 山岸駿(新潟産大附高)

 パラ卓球(肢体不自由)選手の推薦枠で全日本選手権に初出場した岩渕幸洋が、男子シングルス2回戦で敗れ、大会を終えた。

 24日の1回戦は対戦相手の佐々木雄大(愛工大名電中)が棄権し、不戦勝で2回戦へ。そして迎えた自身の初戦は序盤から山岸駿(新潟産大附高)に主導権を握られ、2ゲームを落とした。

 だが、3ゲーム目に入ると岩渕も反撃。3−3からリードを奪い、競り合って8−8になった後も先にゲームポイントを握った。しかし、10オールに並ばれると粘り切れず、ストレートでの敗退となった。

 権威ある全日本選手権だ。出場するだけでは終わりたくない。
 「出るからには勝ちを目指す」という強い気持ちで臨んだが、左足に障害があり、装具を着けてプレーする岩渕はバック側への動きに制約がある。
 その課題は東京パラリンピック前から強化に取り組んできた部分だが、全国から卓球の猛者が集う全日本選手権では通用しなかった。

フォアに動かして、バックをつぶす厳しい攻めに苦しんだ

 試合を終え、「徐々に自分の用意してきた形を出せる展開にはなったけど、もっと最初からどうやったら(相手に)プレッシャーをかけていけるかをやっていかないといけないと感じた」と悔しそうな岩渕。

 今年8月に開幕するパリパラリンピック代表を目指す中で、「自分のプレースタイルを見直して、フォアハンドだけじゃなくてバックでも相手をコントロールしていくことをテーマにしている」と言い、その意識は3ゲーム目に表れた。「3ゲーム目の形で相手に打たれても怯まず、相手のボールを利用して戦っていけるようにしたい」(岩渕)

 また、今大会で初めてパラ選手として全日本選手権の舞台に立てたことについては、「チャンスをいただけるのは選手として恵まれている。こういうルール作りをしていただいたことに感謝をしたい」「パラの選手もパラの中だけにとどまっているのではなくて、卓球の一選手として健常の選手とも渡り合える気持ちを強く持ってやることが必要だと思っている」と語った。

 岩渕がパリパラリンピック日本代表になるには、4月1日発表の世界ランキングで8位以内に入ることが条件。「プレッシャーがかかる場面が続くと思うが、そこを乗り越えたい。3月に3大会、ヨーロッパで国際大会が予定されている。一度体制を立て直して準備をしていきたいです」。

今大会で得た課題と収穫を胸に、パリパラリンピックを目指す

 2016年リオデジャネイロ大会は無念の予選敗退に終わり、その雪辱とメダル獲得を誓った東京大会では、あと一歩目標に届かなかった。
 パリ大会は自身の集大成。それくらいの気持ちで代表の座を取りに行き、悲願のメダルを狙う。

(文=高樹ミナ)