MURAMATSU, Yuto

村松雄斗
昨季、ブンデスリーガで大暴れ

村松雄斗
「V>20」を語る 「ブンデスで活躍できた理由のひとつはラバーだ」

ラバーを変えなくなった村松雄斗。
打ったらすぐにわかった。「自分に合うラバーだ」

ジュニア時代から世界が注目していた選手、村松雄斗。小学生時代、教えを請うために大阪の「ミスター・カットマン」高島規郎氏(元世界3位)の元を何度か訪れた。のちに「村松に教えることはない。背が大きくなるのを待つだけだ」と言わしめた。
カットだけでなく、サービスからの3球目攻撃、両ハンドのカウンター攻撃に、世界の関係者は目を見張った。ユース五輪でも決勝で樊振東(中国)と激戦を演じ、銀メダルを獲得した。
そこから村松はひざの故障に長く苦しむことになる。高島氏が期待したとおりに背は高くなったのだが、ダイナミックなプレーに体がついていかなかった。
一方、両面裏ソフトでスタートしたカット+攻撃スタイルが、バック面が粒高になったり、表ソフトになったり、裏ソフトに戻したりと迷路に入ったようにさまよっていた。そして、オーバーに言えば、大会ごとに用具が変わる。まるで「村松の癖(へき)」のように言われていた。
その村松のラバーがまずはバックの表ソフトは「SPECTOL S1」で固定され、昨年3月からはフォア面は「V>20 Double Extra」を使い続けている。それと並行して、昨シーズン、世界最高峰プロリーグのひとつドイツのブンデスリーガで、20勝5敗というリーグ2位の好成績を残した。この成績とラバーの関係はあったのだろうか。
<取材:卓球王国>

「どうせ使えない」と期待もされず、自分も期待していなかった。ところが、カットが相手コートにしっかり収まる

去年の3月からV>20 Double Extra(以下「20」)を使っています。正直に言えば、それまで自分に合うラバーがなく、いろいろ試しながら使っていました。「村松は用具をいろいろ変える、一定しない」と言われていたのは知っています。それは単に合うラバーがなかったからで、バック面の「SPECTOL S1」も変えていないし、「20」も昨年3月からずっと使っています。
カットと攻撃の両方が重要ですが、優先的な部分で言えば、まずはカットですね。メーカーが開発するラバーは当然攻撃重視なので、攻撃はやりやすいのですが、いざそれでカットをするとコントロールが難しい。
また、「20」の前に試したドイツラバーは重くて、ボールが直線的に飛んでいくのでカットはなかなか難しかった。他の日本製ラバー(テンション系)も攻撃は良くてもカットをすると飛びすぎる。

最初に使った時の感覚でわかります。それまでのラバーはぼくがラバーに合わせる感じだったけど、使っているとストレスを感じるんです。
でも良いラバーというのは、ぼくが合わせるのではなく、ぼくのスタイルや打法にピタッとはまる感じです。「20」がそれでした。ぼくが合わせる必要がなく、ラバーがまさにぼくにぴったりで、違和感もストレスもなかった。
最初にVICTASの担当の人がラバーを持ってきた時も、ぼくは正直期待していませんでした。どうせ、ぼくには合わないんだろうな、という思いです。おそらく担当の人も「どうせ村松は使わないだろうな」という気持ちはあったと思います。

フォアのカットが安定し、攻撃も鋭さが増したことで相手はバックにボールを集めることが多くなり、「SPECTOL S1」の変化がより発揮された

ところが、使ってみたら「自分に合っているラバー」だとすぐにわかって、それからは変えることなくずっと使っています。
まずカットした時に相手コートにボールが収まってくれた。もちろん相手コートにカットが収まるラバーはありますよ。でもそういうラバーは攻撃では難しいけど、「20」はカットもしっかり収まりながら攻撃も良いボールが打てました。
「20」を練習で使った時に相手をしてくれた選手たちの声も気になりますね。自分も打ちやすいけど、相手も打ちやすいラバーだと試合では勝てないので、実際には使えない。ところが、「20」では相手をしてくれた人が「このラバーのほうがやりづらい、良いボールが来ている」と言ってくれたんです。そこはポイントですね。

「ブンデスリーガで活躍できたのは、ラバーのお陰の部分もあります。メーカーへの配慮ではなく、本心です」

ぼくの攻撃は2パターンです。まずはサービスを持った時の3球目攻撃のように、台について打つドライブと、カットしてからのカウンタードライブです。カットをする時には台から下がり気味の位置で、そこから前に踏み込みながらカウンタードライブをします。「20」はこの両方がやりやすい。ボールがよく引っかかる感覚があって、弧線を作って相手コートに入っていきます。
自分の腕が上がったのかと勘違いしそうです(笑)。実際にそうかもしれないけど。

わずかな個体差がありますが、「硬い」と思ったらぼくは使わないので、結果的に少し軟らかめのものを選んでいます。硬いものは少し重く感じるし、カットが収まりにくい。
攻撃選手、特にプロの選手たちは大会があると、毎日のように替えるかもしれないけど、ぼくは新品ラバーは試合で使えない。最初は接着剤の影響なのか、重く感じるので、貼って1週間後に試合に出るのが良いですね。いつも「20」は2、3週間は使っています。
カットがやりやすいラバーではあるけれども、攻撃選手が使うにしてもカウンターを重視する選手には合うラバーだと思います。

フォアの攻撃は前陣でも中陣でも精度が増し、威力もしっかり出ていることを感じる

カットだけを考えれば、軟らかめのラバーのほうが安定はします。でも、質の高いカットを求めるならば「20」のように少し硬めのラバーのほうが良いとぼくは思います。軟らかめのラバーはしっかり食い込んでくれるけど、打ちやすいカットが行く感じがします。少し硬めのほうがコントロールの難しさは少しあるかもしれないけど、強くインパクトした時のカットの威力、切れ味が違いますね。
中陣からのカウンタードライブも軟らかいラバーだとボールが相手コートで失速しますが「20」は失速しない。威力だけを考えれば他にもラバーはあると思うけど、「20」にしてからは攻撃の精度は上がっていると思います。

194gが今ラケット全体の重さです。軽くて威力が出るものが良いけど、今はボールの威力もあるし、カットも収まるから、これが合っているんでしょうね。
昨シーズン、ブンデスリーガで活躍できたのは、ラバーのお陰の部分もあります。これはメーカーへの配慮で言うのではなく、本心です。
用具に関する不安がなくプレーできた。ジュニア時代から、「村松はいつも用具を変える」と言われたのは、逆に言えば、ぼくはいつも不安だったんです。いつも自分に合うラバーを探していたから変えていたんです。ところが「20」を使ってからぼくはラバーを変えていない。
不安なく、ストレスなく、プレーに集中できたのが好成績につながった。今シーズンも頑張ります。

昨シーズンのブンデスリーガで個人成績2位だった村松は、ヨーロッパ2位の『ザールブリュッケン』に移籍した。ブンデスリーガでも常に『ボルシア・デュッセルドルフ』と優勝を争う強豪チームで真価が問われる。
(写真と取材:卓球王国)

●村松雄斗/むらまつ・ゆうと
2014年ユース五輪銀メダリスト、昨シーズン、ドイツ・ブンデスリーガ1部『マインツ』で20勝5敗の成績をあげる。今シーズンは同じくブンデスリーガの『ザールブリュッケン』でプレーする
V>20 Double Extraをフォア面に使用

V>20 Double Extra
●¥7,150(税込み)
●ハイエナジーテンション裏ソフトラバー
●赤/黒
●1.8mm/2.0mm/MAX
 SKU 200080

https://www.victas.com/ja_jp/products/rubber/pinplesin/tension/v20-doubleextra