VICTAS JOURNAL

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韓国男子、中国を追い詰めた。しびれる死闘、中国踏ん張る

●男子準決勝
 〈中国 3−2 韓国〉

王楚欽 −7、2、−11、−6 張禹珍◯
◯樊振東 8、6、8 林鐘勲
馬龍 −7、4、−10、6、−4 李尚洙◯
◯樊振東 6、7、10
◯王楚欽 5、7、6 林鐘勲

 釜山のBEXCO(ベクスコ)のメインアリーナに、試合前から熱気を放つ観衆が吸い込まれていく。男子準決勝の地元・韓国と王者・中国の一戦。会場は満員となり、トップの張禹珍が得点するたびに会場は大興奮状態になる。

 1番の1ゲーム目、張禹珍がフォアハンドで攻め込み、11-7で先取しただけで、会場はまるで優勝したかと思うほどの熱狂の渦に呑み込まれる。
 2ゲーム目、王は徹底して張のバックをつぶす。8-0まで王がリードし、2本で取り返す。3ゲーム目は一進一退の展開を最後、張がフォアハンドで決め、13-11。全員が総立ち。会場が揺れている。

張禹珍、トップで王者・中国から先制点!

 同じ東アジアでも、韓国の人々の感情表現は激しい。数百人ほど詰めかけた中国の応援団も完全に霞んでいる。昔を思い出した。1988年ソウル五輪で地元韓国が優勝した時の熱狂と同じだ。時は違えど、韓国の人たちの中に流れる熱い血は変わらない。

 4ゲーム目、5-3から2本連続でネットインで7-3で張リード。流れは彼が作っている。11-6で張禹珍が勝利。技術以上の何かが動いている。

 ソウルで開催された1986年アジア競技大会で韓国に敗れた中国は、そのあまりに凄まじい韓国の応援対策のため、ソウル五輪に向けて国家チームの合宿で「騒音訓練」をしたのは有名な話だ。練習場で観客の声援を吹き込んだテープを大音量で流し、平常心で戦う訓練をしたという。

 しかし、近年、中国を脅かし、メンタルを狂わすような相手はいなかった。ひょっとしたらもはや中国チームは「騒音訓練」を忘れているのかもしれない。トップの王楚欽は明らかに力を出し尽くす前に敗れた。

 しかし、簡単には崩れないのもまた中国だ。2番の樊振東が林鐘勲をストレートで沈めた。3番は馬龍対李尚洙。強靭な足腰で動いて放つ李のフォアドライブにミスが出る馬龍。試合はもつれて最終ゲームへ。李が5-3から9-4とリードを広げ、馬龍のレシーブの打ちミスで10-4と李のマッチポイント。馬龍が李のバックドライブをブロックできず、11-4で李が勝利した。韓国はあと1点で中国に勝利する。

世界王者のプライドを見せ、2番で完勝した樊振東
台上の小技とフォアのパワードライブのコンビネーションを見せた李尚洙

 もし中国が負けると、2000年クアラルンプール大会でスウェーデンに負けて以来の敗戦となる。しかし、トップで王楚欽に勝った張禹珍が樊振東に挑むも、ストレートで退けられた。中国のエース樊振東は窮地で踏みとどまった。なんという男だ。

 ラストは王楚欽と林鐘勲。スタートからリードを奪い、王にプレッシャーをかけたい林だが、逆に王が6-0とリードし、11-5で王が1ゲーム目を先取。続く2ゲーム目も王が連取。3ゲーム目の3-2ではスーパ-ラリーを王が取る。王がバッククロスのフォアドライブ、強烈な台上バックドライブを次々と決めていく。最後は11-6、王楚欽が王者の威信を守った。中国を追い詰めた地元・韓国は、勝利を目前に涙をのんだ。

1番で敗れた名誉挽回、王楚欽が林鐘勲に完勝して中国が勝利

 2点を叩きだした樊振東は会場インタビューで、「とてもタフな試合だった。決勝までに良い準備をします」とコメント。3番で馬龍に勝った李尚洙は「大変な試合でした。でも良い試合ができた。応援してくれた観客のみなさんありがとうございました」と語り、大きな拍手を浴びた。