VICTAS JOURNAL

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オーストリア戦2番で貴重な勝利。篠塚大登が見せた「前への覚悟」

日本男子がパリオリンピックへの出場権を手にした、決勝トーナメント2回戦のオーストリア戦。トップで張本智和が苦しみながらも勝利した後、2番に出場した篠塚大登。

 試合の序盤から、前陣でのバックハンドのカウンターは面白いように決まっていたが、台から下がるとフォアで何本攻めてもガルドスのブロックを崩せず、失点するパターンが続いた。ゲームカウント1−1の3ゲーム目、出足で0−4と離された時は嫌なムードが漂った。

 篠塚は試合後のミックスゾーンで「ラリーが何回も続く時があって、少し自分が下がりすぎて点を取れていなかった」と試合を振り返った。「すぐ下がってしまうのは自分の癖(くせ)というか、課題でもあった」(篠塚)。3ゲーム目を逆転で取った4ゲーム目も、5−5からフォアハンドの連続ドライブをガルドスに返され、5−8と離されている。

 相手は百戦錬磨、45歳の大ベテラン。最終ゲームまでもつれてしまうと勝負の行方はわからなかったが、篠塚は最後の最後で「もう少し前でプレーすることを意識できた」と語る。
 
 「少し勝負に出たというか、前に出ないと勝てないと思った。ちょっと強い気持ちを持って、勝負に出たという感じです」(篠塚)。9−9まで追いつき、ここでガルドスのフォアサイドを駆け抜けたバックのカウンターは素晴らしかった。本人曰く「あのバックハンドはたまたまというか……」とのことだが、「前への覚悟」が打たせた一本であることは間違いない。

勝利の瞬間、ともに天を仰いだ両選手。歓喜と落胆が交錯した

 篠塚が10−9でマッチポイントを握り、最後の一本は高く浮いた篠塚のレシーブに対し、ガルドスがバックドライブをイージーミスして決着がついた。「ちょっとラッキーと思っちゃいましたね」と苦笑いを見せた篠塚だが、これもまた篠塚の気迫がガルドスにプレッシャーを与え、打たせた1本とも言えるだろう。

 2月5日の五輪代表候補内定選手の発表で、日本男子3人目の代表に選出された篠塚。「五輪の代表権を決める試合で、自分が1点獲ることができて本当に良かった」と安堵感もにじませた。今大会の最低限の目標をクリアし、明日の中国との準々決勝で大ブレイクといきたいところだ。

パリ五輪団体戦に出場する張本智和、戸上隼輔とともに、パリ五輪行きのチケットを手に記念撮影